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雪山で温泉三昧

北海道 大雪山

中岳温泉をベースに

【期  日】

2003年3月24日(月)〜27日(木)

【メンバー】

yuki


 山登りの目標はピークに立つこと、これは基本だと思うけれど、長くやっているとそれだけでもなくなってくる。沢の継続遡下降では、沢を登り詰めた後、近くのピークに寄らず、鞍部を越えたらそのまま別の沢を下降することは極普通のこと。私の場合、湿原や野湯も山頂と同様に目標の一つになっている。

 大雪山中岳温泉も、いつか行ってみたいと考えていた。でも、無雪期は道を辿れば簡単に行けるし、訪れる人も多い。それではあまり魅力が無い。行くなら積雪期と決めていた。今回、それを実現しよう。

3月24日

姿見駅付近から旭岳

 旭川からバスで旭岳温泉へ向かう。このバス、冬期の間、行きはなんと無料(注:当時)。普通なら往復するはずだからね。バスは天人峡温泉へ寄った後、徐々に高度を上げていき、所々で車窓から旭岳が見えてくる。ゴールデンウィークの頃とは違い、まだ全山が真っ白。天気も快晴。うーん、素晴らしい。旭岳温泉でロープウェイに乗り継ぎ、標高1600mの姿見駅へ。外へ出ると目の前に旭岳が迫る。噴煙をあげる地獄谷が荒々しい。

 当初の計画では、ここから旭岳山頂を経て、中岳温泉へ滑り込む予定だった。しかしザックが重い。なにしろ、5日分の食料に加えて、入下山口が異なるため、着替えなども全て背負っているのだから。これでは滑りが楽しめない。思案の末、先に中岳温泉へ向い、BCを設営してから、どこかを滑りに行くことにした。

 進路を東北東に定め、中岳温泉までほぼ直線的に、旭岳の北西山麓を巻いて行く。左手に、広大な裾合平が見下ろせて、その向こうに当麻岳、安足間岳が見えてくる。今の時期、天候が荒れれば冬山そのものだろうけれど、日が差していれば穏やかな春山の優しさが漂う。

中岳温泉

 目指す中岳温泉は、あの辺りだろうか。正面に、両岸とも崖に挟まれた狭い谷がある。その谷へ入っていくと……。硫黄の臭い、そして雪面に穴が開いていた。覗き込むと、ちょうど浴槽が作られていた所だった。よしよし。直前の三連休に人が居たのか、すぐ近くに風除けの雪ブロックが積まれた幕場跡がある。そこをありがたく使わせてもらい、整地作業もすることなくテントを設営できた。

 入浴は後に回し、さて滑りに行こう。とりあえず、2番目に標高が高い北鎮岳へ行くことにした。谷を出て、すぐ北へ向い、ピウケナイ沢分流の谷に沿って登っていく。谷の中には、まるで地面がそうなっていると思わせるほど、とてつもなく巨大な雪庇状の吹き溜まりがあり、見た目の地形を複雑にしている。谷が突然無くなったり、急に深い窪みが現れたり。まさにノコギリの刃のように岩が並ぶ鋸岳が正面に見えて、やがて右後へ。

北鎮岳山頂から白雲岳方面

 北鎮岳山頂へ着く頃には、雲が涌いて来た。でも雲間に回りの景色は眺められる。黒岳、北海岳、有毒温泉と、広大な風景。雲が流れ去ると、背後にブロッケンの妖怪が現れた。

 さて、シールを剥がし滑降へ。往路をそのまま下る。山頂直下はアイスバーンだったが、僅かの間。その後はパックされた固めの雪。まあまあだろう。まずは一本滑り満足。

 中岳温泉へ戻り、さっそく湯の中に飛び込む。至福のひと時。やがて日が暮れ、見上げる空が、夕焼けから藍色へと移り変わり、星が瞬き始めた。そろそろ上がりますか。

3月25日

 夜半から雪が舞い、今朝もまだ雪模様。でも天気予報は天候の回復を告げており、下界は既に晴れているらしい。のんびりと朝食を摂りながら、天気の様子をみることにした。しかし、10時を過ぎて雪は止んだものの、視界が利かない。痺れを切らし、一旦外へ出て、旭岳を目指そうとした。

 谷を出て少し進むと、白一色の完全なホワイトアウト。振り返れば、すくそこにあるはずの谷の入口も見えない。トレールが消されたら、戻るのが難しいと引き返す。とりあえず、浴槽の整備をすることにした。泥を掘り出し、脱衣所を作り、湯温調節も完璧。

 作業が終わる頃、時々視界が利くようになってきたので、再び旭岳を目指すことにした。谷を出て、熊ヶ岳の裾に沿って南へ向い、旭岳の北面を登る。標高を上げると、結局またホワイトアウト。高度計とコンパスの計器歩行となる。西風が強いので、東側へ回り込みながら頂上へ。突然標識が現れ、山頂へ着いたことを知る。

 下りは往路と同じラインにとる。山頂直下は、ガリガリのシュカブラに加えて岩が出ていて、あまり快適ではない。少し下ると、視界が利くようになっていた。浅い谷に滑り込んだら、良好な雪質となる。思い切って滑り込むと、あっという間に傾斜の緩い所まで降りてしまった。もう一本滑るには、やや時間が中途半端。まあいいか、温泉へ入ろう。これが目的なのだから。後は丘状の所をたらたらと流し、中岳温泉へ戻った。

 温泉は整備したので、昨日にも増して快適。既に青空が広がり、日も差しているので、寒くもない。時間はたっぷりと、充分に満足。

3月26日

 今日は朝から良い天気。しかし、明日から天気が崩れるようだ。予定では、ここにもう一泊することにしていた。予定通りとするか、早めに今日引き揚げるか。結局、初めての積雪期の大雪、慎重を期して、引き揚げることにした。でも、愛山渓温泉までは2、3時間もあれば下れるので、一本滑って行こうか。

 安足間岳の斜面も良さそうだが、やはり最高峰旭岳からの展望を見てみたいと、再び旭岳へ。昨日とはルートを変えて、真っ直ぐ北斜面を往復することにした。今日はルートファインディングに気を使うこともない。ひたすら登っていけば、西に張り出す尾根の肩にでる。右に地獄谷の絶壁を見下ろしながら、頂上へと向かう。

旭岳から安足間岳方面

 期待した通り、山頂からの展望は素晴らしかった。大雪の山々はもちろん、遠く十勝岳、石狩岳などの山々も見える大パノラマ。足元から切れ落ちる地獄谷も大迫力。ついつい長居をしてしまう。

 さあて滑降だ。西の肩までは、岩が出ているので歩いて降り、そこから北斜面へ滑り込む。雪は適度に緩み、滑り易い。当麻岳、安足間岳の麓に広がる裾合平を見下ろしながらの、豪快な滑降で気分爽快。もう一本、滑ることもできるけれど、やっぱり中岳温泉かな。戻ってから、また温泉へ。これもなかなか捨て難い。

 さて、名残惜しいけれど、いよいよ下山だ。テントをたたみ、谷から出る。裾合平は、とにかく広い。視界はあっても、適当に行くと現在地を見失いかねない。熊ヶ岳の麓に、良い目印となる岩があり、そこからピウケナイ沢を渡る地点にコンパスを合わせ、後は一直線に進む。まさに雪の砂漠。頚城の焼山北面台地も広いけれど、それ以上だ。

 ピウケナイ沢は深く切れ込み、渡る場所は限られる。この場所を見過ごせば、迷うだろう。当麻乗越を回り込むと、沼ノ平が見下ろせる。今はただの広い雪原。ここまで来れば、もう登りはない。シールを剥がし、滑降に移る。滑れば速い。すぐに村雨ノ滝の横を通り過ぎ、台地の端へ。谷の中に建物が見える。あれが今日の宿か。標高差200mほど、やや急な斜面を滑り降りると愛山渓温泉の前にでた。古き良き時代の記録に登場し、いつか雪のあるときに訪ねてみたいと願っていた所だ。

 ここは、本館と別館のヒュッテがあり、今の時期ヒュッテは無料。もちろんヒュッテに泊まる。昔から使われていた建物で、こちらの方が趣もある。夕食後に、本館にある温泉へ入った。

3月27日

 朝、起きてみると意外にも天気は悪くなかった。薄日が差しているくらいだ。一瞬しまったと思うが、山の方を見ると雲の中。やれやれ。ここは、なかなか居心地の良い小屋で、食料と日程は余っているので、ここでもう一泊とも考えた。だが、明日こそ天気は悪いらしい。やはり今日中に町まで出よう。

 国道へ車道が通じているが、今は雪に埋まっている。バス停までは19Km(!)もあるのだが、ここは冬でも管理人が常駐し、来る人は来るのだ。最近はスノーモービルが多いらしいが……。

 最初、道は緩い下りになっていて、スノーモービルの轍に乗ると、スキーが滑る滑る。これは快適で速いと思っていたら、途中まで除雪が入っていた。それでも、暫くは道の上に薄く残された雪の上を滑っていけたが、途中から切れ切れに。スキーを担ぐよりはと、道路脇の雪の上へ逃げるが、それも束の間。上り坂が出てきて、とうとう観念した。

 スキーをザックにくくり付け、歩いていく。バス停まで、あと10Km位か。国道から5Kmほどの所にゲートがあり、そこまでは送り迎えもしてくれるらしい。でもまあ、気ままに行こう。この4日間の山行の余韻に浸りながら……。


今回、滑りの方は今一だったけれど、温泉は充分に楽しめたので良しとしようか。山域の概念は掴めたので、今度来る時は思いっきり滑り巡ろう。

【行 程】

3/24

旭岳ロープウェイ(11:45)−中岳温泉(13:10〜14:30)−北鎮岳(15:55〜16:05)−中岳温泉BC(17:00)

3/25

BC(11:30)−旭岳(13:35〜13:50)−BC(15:00)

3/26

BC(7:05)−旭岳(8:40〜9:20)−BC(10:10〜12:50)−当麻乗越(14:00)−愛山渓温泉(15:00)

3/27

愛山渓温泉(10:30)−愛山渓温泉入口(15:10)

【1/2.5万地図】 層雲峡、白雲岳、愛山渓温泉、旭岳